シーズンはじめに 「エンジンがかからない!」という相談を受け どこが悪いのか確認をしていたら 次々と問題点が発覚してしまい セルモーターを直すはずだったのが 結局エンジンをバラバラに・・・
- Hくん所有のジェットは95年式シードゥー720XP。
- 毎年6〜8月まで海で使用。
- 必ず使用後は水洗キットを使い 真水で塩抜きをおこなっていた。
- CRCなどを使い メンテナンスはきちんとおこなっていた。
まあ〜ごく一般的なレジャーユースのライダーであるHくんです
船体も年数がたっているわりにはとてもきれいで 整備が行き届いてると思わせる状態でした。
壊れるまでの経緯
- 例年通り、シーズンはじめになので 日曜日になる前に自宅でエンジンだけでもかけておこうと セルを回したところ なかなかエンジンがかかりません。
チョークを引いたり押したり、アクセルレバーを何回もあおったり セルをかなり回したけどだめでした。
- バッテリーも弱っていたせいか20分もしないうちに バッテリーが上がってしまいセルが回らなくなりました
- ブースターケーブルを使い車から12Vをつなげて再度挑戦しました
- プラグをはずして確認したらプラグが錆ついていて グショグショにかぶっていたので 新品に交換しましたが全く効果がありませんでした
- ガソリンコックのオン、オフ、リザーブを何回も動かしたり ガソリンフィルターを掃除したりして 30分ほど回してみましたがだめでした。
- 30分をすぎた頃になると セルの回りが悪くなってきて 終いにはボタンを押しても「ウィッ!ウィッ!」というだけで全然回らなくなりました
初心者の方なら どなたにでも起こりそうな事ですし 対応の仕方も初心者の方なら仕方がないかな〜と思いますが ここは「チューニング道場」愛読者のみなさんには 一歩上級者になっていただきたいと思います。
セルモーターが壊れた理由
まず 4.でセルモーターが回らなくなったのは 20分間ジェットのバッテリーが上がるまでセルを回し続け その後、車のバッテリーから12Vを引っ張ってきてからも 30分間セルを回したために モーターのコイルが焼けてしまいました
さらに 過電圧をかけてしまったために バッテリーからセルモーターにつながる 太いケーブルも焼けてしまい破損していました。
エンジンがかからなかった理由
メールや掲示板などで寄せられるご質問に 「シーズンはじめにエンジンがかからない」 というのは多くあります。
症状として現れているのは 「エンジンがかからない」 ということだけですが その原因はたきにわたります。
- ガソリンに関わる原因
- 電気系統による原因
- その他、エンジン本体、ポンプ等の破損による原因
大きく分けるとこの3っになります。
- ガソリンに関わる原因
- ガソリンが出てきているか出てきていないかを確認する
- プラグをキャブクリーナー等で掃除をしてからエンジンに取り付けて セルを数回、回してからプラグを確認してみて油分が無ければ ガソリンが出てきていない。
- プラグがグショグショになっていればガソリンが出てきている
- 対処方法 1
- 長期間放置されている場合はキャブレター内のガソリンが気化してしまい セルを回した程度ではガソリンをタンクから引き込めないときがあります。
そんなときはプラグの穴から直接ガソリンを少したらしてから エンジンをかけてみます。
一瞬「ブワァーン」とかかりますので2〜3回繰り返すとかなりの量のガソリンを引き込めるはずです。
または荒療法ですがキャブレターの空気取り入れ口にCRCなどを吹き付けながらセルを回すと同じように「ブワァーン」とかかります。
- これでもだめならキャブレター、フィルター、タンク内の取り入れ口などの分解掃除が必要になってきます。
- 初心者の方には特にキャブレターの分解は不安なものがあるでしょうが 水の上を走っているジェットにとってはキャブのメンテナンスは必ず必要です。 詳細はここの後半で書きます。
- 対処方法 2
- 他には問題が無く、ガソリンが出てきているのにエンジンがかからない ただしプラグがグショグショになっている。 つまりかぶらせてしまったということです。
- これはシーズンはじめに関わらず普段でも多く起きることです。
- 今回のHくんの場合はこれに該当します。
- この状態に陥ってしまったとき クランクケース内に大量のガソリンがたまってしまい それがセルを回すことでクランクでかき上げられ キャブから新たに入ってくるガソリンとで よけいかぶらせる事になります。
- まず、大量にたまったクランクケース内のガソリンを取り出すことを考えます。
- ガソリンコックをオフにしてプラグをはずし プラグの穴に親指で穴をふさぐような形で押さえます
そのままセルを回すと 親指の隙間からガソリンが噴き出してきます。
5〜6回繰り返すとかなり無くなってきます。
- ゲレンデなどで回りに手伝ってくれそうな人が沢山いるようでしたら 10人ぐらいにお願いして ジェットをゆっくりと裏返しにしてもらうと 早いです。
このとき吸気側が下になるように ゆっくり回して行きます
(ヤマハ、カワサキ、シードゥー720以前ならキャブが下になるように)
(シードゥー800、951ならキャブが上になるように)
- ある程度ガソリンが出てこなくなったら プラグをキャブクリーナー等できれいに掃除してから取り付けます。
- ガソリンコックがオフになったままエンジンをかけてみます
- キャブレター内に残っているガソリンが少なくなってくると空燃費のバランスがとれたところでエンジンがかかるはずです。
- エンジンがかかったら少しそのまま回しておきます。
(ケース内に残っているガソリンを燃やすため)
- ひどいときはコックがオフになっているにもかかわらず4〜6分回り続けることもありました。
- 電気系統による原因
- プラグから火花が飛んでいるか確認する
- エンジンからプラグを抜いて プラグキャップに刺します。
- プラグのアース部分をエンジンアースします。 このときアースしにくいので車用のブースターケーブルなどを持っているようでしたら 片方をプラグのネジ部分に もう片方をエンジン本体の出来れば塗装ののっていないところにはさみます。
- きれいに飛んでいれば問題ありませんが ばらついたり飛んでいないようでしたら対処が必要になります
- 火花が飛んでいないようでしたら
- まずはプラグを新品に取り替えて再度確認する。
- プラグキャップの中のプラグとの接点がカーボンなどで汚れていたら掃除をする
- 錆や破損があったらプラグキャップを交換する
- プラグキャップとプラグコードの接続をやり直す
- ねじ込みタイプのものなら 回せば簡単にはずれる。 まれにピンフックタイプもあるので要注意
- はずしたプラグコードのはじを3cmほどカットしてから プラグキャップをつけ直す。
- このときキャップ内のネジ部分は5巻きほどしかないので プラグキャップをねじ込むときは5回転以上回さないこと。
- バッテリーとケーブルとの接点を確認する
- ここが軽い接触不良を起こしていると 電圧低下を起こしセルの回りも悪くなるし 着火もばらつき弱くなる。
- これでもだめなら コイル、CDI、各配線、コネクタ、etc など順番に確認して行かなくてはいけなくなるので初心者には かなり難しくなってくる。
なにぶんにも電気は目で見えないだけに 不良箇所特定するのに時間がかかる。
さて今回のHくんの場合は 細かい原因究明をおこなってわかったことですが まず、エンジンがかからないなと思った直後に プラグが錆ついていたことに気づかずプラグ交換もしないで そのままエンジンを回し続けたことが 大きなトラブルへの始まりだったようです。
途中でプラグを新品に取り替えたときは すでにケース内にガソリンが溜まってしまい 手遅れになっていた。
さらにエンジンを回したためにスターターモーターまでも壊してしまった。
ジェットを所有していると必ずと言っていいほど このような「エンジンがかからない」 ということに遭遇します。
わかっていればたいしたことでは無いのですが 初心者にとっては「エンジンがかからない」ということほど不安なものはありません ぜひみなさんのジェット仲間にも教えてあげてください。
ここで終わりと思いきや・・・・・
実はこの後、とんでもないことが発覚しました
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