冬も終わりの夜の話 Part6



今日はやつの様子が変だ!
あのどう猛さが無くなっている
母の優しさのせいか?
久しぶりにこんなメールが届いた

   お陰様で、術後一週間がたち、だんだん痛みも、
  収まってきて、皆様に、ご迷惑をおかけして、  
  大変すんませでげしたー。そして2カートン会った、
  たばこも、そこを、付き始めたので、1〜2カートン
  ほど、配達の、採届けていただけると、助かるので
  すが?いかがでございましょうか。又この間の、CD
  お金も、お渡ししたいとおもいます。


                (原文そのままコピーより)



 
ハイテクマシーンとビニールホースに
つながれているやつが ヤニ欠でうろたえている。
私は不思議だった。
あの状態でどのようにして
遙かかなたにある喫煙所まで
たどり着こうと言うのだ? 
手術前の愛おしい点滴スタンドのような訳にはいかない!



翌日、またメールが


  
やにけつで死ぬー(たけちゃん口調)
  でもまだ好調とまではいえないです


                (原文そのままコピーより)



これはまずい、どうやら手術より苦しいらしい
早速、やつご愛用の黒い変わった箱のたばこを
購入し いざ病院へ向かう。


個室の扉を開けると 昼過ぎだと言うのに
部屋は暗く なま暖かい空気がよどんでいた
ベッドをのぞくと やつはくたばっていた
手術後10日もたったと言うのに
発熱と術後部分の痛みでうなっていた


膵臓(すいぞう)の3/2を切除!
さらにそこからバイパスラインを増設!
まるでジェットのエンジンをチューニング
しているかのような改造だ!
これでは簡単に直る訳が無い。



例のご愛用の黒い変わった箱のたばこを手渡すと
 「いやー助かった 10日もヤニ欠で・・・・」
やつはめちゃくちゃ喜んだ!
そこで私は訪ねた?
 「たばこぐらい買ってきてくれる彼女がいるんだろう?
  一ヶ月以上も入院しているんだから二人や三人ぐらい
  お見舞いに来てくれているんだろう?」
と訪ねると もじもじしながら
 「いやー 来てくれたには来てくれたんだけども・・・」

なーんだ やつはしっかり彼女を連れ込んでいた!
私はタダのパシリだった。

やつはさらにもじもじしながら ボソボソっと言った

 「いやー 来てくれたには来てくれたんだけども・・・・・
  ・・・・たまった 飲み代を払えって 金を持っていった」

 

99/4/3