しとしと雨の夜の話 Part11


ここ最近、ちまたで噂になっていた
お見舞いに行った人がみんな口をそろえて

 「やつは危ないんじゃないか?」
 「手術後1ヶ月にもなるのに 今だに
   個室の独房生活はおかしい!」
 「あの異常な痩せ方は 変だ!」

中にはこんな事を言い出すものが出てきた
先輩ライダーの I 氏が言っていた

 「やつは ガンじゃないか?」
 「俺の友達が5年前に 肝臓で手術をしても
  2ヶ月近く個室から出られなくて
  その時の痩せ方が 今のやつにそっくりだ!」

えー その人はどうしたのかなー

 「そいつ 手術後2ヶ月目に亡くなった」
 「まだ 36才だったんだー」

なにー! まずい! 確かやつは今36才だ!
危ないのか やつは
この物語の最終回を考えて置かなくては


4/16 やつから電話が入った
やけに元気な声で

 「やっと個室を卒業しましたよー」
 「体につながっていた パイプも半分に減ったし・・」

(それでも まだ4本はつながっていたのだ)

どちらにしても長かった 独房生活からは釈放だ
元気な声で電話をしてくるのは当然だ!
当然、ガンの疑いも晴れた


しかし、小さな問題も出てきた
やつの行動は 今まで以上に エスカレートし始めた
ほとんどの時間 二階通路の喫煙所にいる
数人の女の子を従えて 人生相談まがいの事をやっている
やつが人生相談してもらうべき立場のはずだが???

お見舞いに行くときは 自分の病室にいないので
やつを見つけるのは 難しい
それは看護婦さんも 同じだ

 「中島さん! またこんなところにいるんだから!」
 「2:00には検温の時間だから 部屋にいてください!」

すでに3:30になる 看護婦さんは 怒鳴っていた

  


  


1999/4/19