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GAS

燃料関連

ガソリンの製造方法


ガソリンの製造方法
1. 自動車の登場でガソリンが進化
 ガソリン自動車が普及する以前、原油から連産されるガソリンは無用の長物でした。アメリカでは、ガソリンが産業廃棄物として川に捨てられ、火災になったこともあったそうです。
 自動車が発明されたころのガソリンは、原油から蒸留したままの「直留ガソリン」が使われていました。このオクタン価は70以下で硫黄分も多く、現在のクルマを走らせることは到底できない代物です。
 その後、「分解ガソリン」や「改質ガソリン」、「アルキレートガソリン」、「MTBE(メチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)」など、様々な個性を持つガソリン基材が開発され、ガソリンの性能は徐々に向上。今日では走行性に加え、ベンゼンやCO2排出などの環境性能が大きな課題となっています。




2. ガソリンの組成
 ガソリンは、4〜11の炭素数を持つ炭化水素が約300種類集まってできています。炭化水素の性質は、炭素の数と構造によって異なり、下記の表のように分子が鎖状につながったものと、カメの甲のように環状の形をしたものがあります。それぞれに二重結合を持つもの、持たないものがあり、5つに分類されます。
 
■炭化水素の分類■




3. ガソリン基材の特徴と製法
 ガソリン基材は、原油を蒸留してできるLPガス、ナフサ、軽油、重油などを原料に、様々な工程を経て作られます。各種のガソリン基材はどの種類の炭化水素が多いかでその個性が決まってきます。
 主要なガソリン基材の性状、特徴、製法は次のとおりです。
 
■ガソリン基材の性状■
基 材 性 状
RON MON 蒸留
範囲
成 分 vol % 特 徴
飽和 不飽和 芳香族
直留ガソリン 70 68 30〜80 97 0 3 オクタン価が低い。主に飽和分。
イソガソリン 90 88 30〜50 100 0 0 オクタン価が高い。全て飽和分。
改質ガソリン 103 92 30〜185 24 1 75 オクタン価が高い。芳香族が多い。
脱ベンゼン
改質ガソリン
104.5 93 30〜185 31 1 68 改質ガソリンからベンゼンを除いたガソリン。オクタン価が高い。
分解ガソリン 93 80 30〜165 40 40 20 RONは高いがMONが低い。
軽質分解
ガソリン
95 81 30〜90 54 45 1 分解ガソリンからオクタン価の高い軽質分だけを取り出したもの。
アルキレート
ガソリン
96 94 35〜200 100 0 0 オクタン価が高い。全て飽和分。MONが高いのが特徴。
MTBE 117 101 55 100 0 0 低沸点、高オクタン価の含酸素ガソリン基材。メタノールとイソ・ブチレンから合成したエーテル。
ブタン 94 90 -0.5 100 0 0 オクタン価が高い。ガソリンの蒸気圧調整に使用。


直留ガソリン
 軽質のナフサから脱硫装置によって硫黄酸化物を取り除いたものです。オクタン価(リサーチ法オクタン価)は70程度です。
イソガソリン
 軽質の脱硫ナフサから、オクタン価の高い留分だけを分留したガソリンで、オクタン価は90程度です。
改質ガソリン
 接触改質装置により、重質ナフサ中のパラフィン系の炭化水素をオクタン価の高い芳香族系主体の炭化水素に改質したものです。有害物質のベンゼンを含むため、PGリラン装置(脱ベンゼン装置)でベンゼン分留し、「脱ベンゼン改質ガソリン」として使用しています。
分解ガソリン
 脱硫した重質の軽油、あるいは脱硫重油を分解して作ります。オクタン価の高いオレフィン系炭化水素を主体としたガソリン基材です。さらにこの中からオクタン価の高い軽質分を取り出したものが「軽質分解ガソリン」です。
アルキレートガソリン
 ブチレンとLPガス中のブタンを反応させて作ります。イソパラフィン系炭化水素を多量に含み、オクタン価が高く、とくに高速域でのアンチノック性を示すモーター法オクタン価に優れているのが特徴です。航空機燃料(プロペラ機)では、このアルキレートガソリンにオクタン価向上剤を添加して使用しています。
MTBE(メチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)
 一番新しく登場したMTBEは、イソブチレンとメタノールを反応させて作ったエーテルの一種です。オクタン価が非常に高いことと、分子中に酸素を含んでいるのが特徴で、この酸素は排ガス中のCOの低減に効果があります。一方、MTBEを大量に使用すると、NOxが増大するので、わが国では7%以下に混合量が制限されています。

 各装置で精製されたガソリン基材は、ブレンドされて更に添加剤を加え、ガソリンとして製品になります。
 
■ガソリン製造フロー■




 
ブレンドして一定の性能をキープ
 自動車用ガソリンは、数種類のガソリン基材に各種添加剤を加えて作ります。「出光スーパーゼアス」(ハイオク)は5種類、「出光ゼアス」(レギュラ―)は4種類の基材を使用しています。
 各ガソリン基材は、温度による特性が異なり沸点も違います。沸点の高い基材だけ使うとエンジンはかかりにくくなります。逆に沸点の低い基材だけだと、エンジンが温まったとき、ベーパーロックなどの現象がおこります。従って、あらゆる温度の環境下で、一定の性能を保つように、各基材をブレンドすることがガソリンのノウハウになります。
 出光は、環境への配慮から脱ベンゼン改質ガソリンをいち早く導入し、ハイオク・レギュラーの主要基材としています。「出光スーパーゼアス」では高いオクタン価と優れた運転性能を実現するために厳選した5種類の基材を使用しています。
 
■ガソリンの基材のオクタン価■

メーカー資料参照

ガソリンに求められる性能とは  走行性能(ドライバビリティ)に関するもの  清浄性、環境性能に関するもの  
 ガソリンの品質について 
 ガソリンの製造方法  ガソリンの詳細について 1(オクタン価) 
 ガソリンの詳細について 2(成分)  ガソリンの詳細について 3(蒸留性状、添加剤)